Look for a clean stone

カラーストーンにもある鑑定の問題点

2017年3月

今回はカラーストーンの鑑定に関する問題点についてお話ししたいと思います。宝石の鑑定会社は国内外で数社の大手があります、国内であれば中央宝石研究所が最大手ですし、日独宝石研究所もしっかりとした技術の蓄積がある会社です。海外ではアメリカのGIAが有名ですし、ヨーロッパではスイスのGRSとグベリンなどが大手です。ただし鑑定会社によっていくつかの特徴があるので、特に宝石を買う際には注意が必要です。以下いくつか注意点を紹介させていただきます。

産地および加熱処理の判定

以前この欄でご紹介しましたが、ルビーやサファイアにとって熱処理の有無は大変重要です。1500度程度の高温で長時間加熱を加えることにより、ルビーは真っ赤に、サファイアは深い青色に発色するからです。宝石の産地では熱処理を専門に行う業者がいて、程度の悪い石を加工して海外の販売ルートに乗せる行為が一般化しています。熱処理を加えた石は人口石とは違い天然石の範疇に入るため、このような粗悪な石も天然石として販売することが認められているので注意が必要です。テレビショッピングなどで天然石ルビーと称して売られているのがこの類(たぐい)です。ただし宝石について少しでも知識のある人なら、そのような石が投資に向かないということのよくご存じです。さて鑑別書のお話しです。鑑別書の様式は各社マチマチではありますが、必ず熱処理の有無は明記されていますので、購入の際はまず注意してみなくてはなりません、以下はスイスのGRS社によるサファイアの鑑定書ですが、左側ページの一番下Comment欄にNo indication of thermal treatmentとあるのが加熱処理ナシを意味しています。

(GRS社のよるミャンマー産非加熱サファイアの鑑定書)

では鑑定書において産地はどのように記載されているのでしょうか、上記GRSの鑑別書では右側ページのOriginの欄に「このサファイアはビルマ(ミャンマー)産の特徴を有しています」と書かれているように産地の特定をしていますが、すべての鑑定会社が産地の特定をするわけではありません、以下は中央宝石研究所が出したルビーの鑑別書ですが、産地の表記はありません。

(中央宝石研究所によるミャンマー産ルビーの鑑別書)

一方で加熱処理に関しては「レーザートモグラフィー」という分析器を用い、精度の高い判別を行っています。ですから皆さんがもしお手持ちの宝石を鑑定依頼される場合、その目的(産地の特定が主目的なのか、それとも加熱処理の有無を見たいのか)によって、鑑別会社を使い分けなくてはなりません。

ピジョンブラッドとロイアルブルー

サファイアであればロイアルブルーと呼ばれる深い青、ルビーであればピジョンブラッドと呼ばれる深紅・・・これが最高峰と呼ばれる石の色合いです。ただし何をもってロイアルブルーと呼ぶのか、あるいはどのような色合いをピジョンブラッドと呼ぶのか・・・この点に関する基準はあいまいで、どうしても見る人の主観が入ります。

例えば上の写真のルビーは大変美しい石で、GIA社の鑑定でピジョンブラッドのコメントが付いた石ですが、僕の記憶では少しだけピンクが入った石でした。今はこのように少し明るい赤が好まれますので、鑑定会社も明るい色合いの石にピジョンブラッドの評価を与える傾向にありますが、以前はもっと深い赤が好まれる傾向にありました。そのような深い赤の石はミャンマー現地で今でも「レディイ」(注)と呼ばれ珍重されるのですが、このような石は不思議とGIAに持ち込むとピジョンブラッドのコメントはつかず、Dark Redの評価で終わってしまいます。レディイ好みの僕にとっては何とも納得がいかない昨今ではありますが・・・・

注)レディイ:現地の言葉で「喉」の意味、赤さの度合いを体の部位で表現する習慣が現地では昔からあります、喉に近づくほど赤が深く稀少性も高くなります、したがって今でも現地ではレディイと呼ばれる深い赤が好まれます。

サファイアにおけるロイアルブルーも同様で、鑑定会社によって基準がバラバラで一定の基準というものがありません。例えば最初にご紹介したGRS社の鑑別書をご覧いただくと、左側ページのColor欄にvivid blue(GRS type “ Royal Blue”)と少し遠慮がちに書いていますが、これをもって「この石はGRSがロイアルブルーと鑑定した」ということになるわけです、ただしこのGRSのロイアルブルーはあまり高く評価されません、とにかく基準が甘すぎて、大手百貨店などに行きますと、必ず「GRS/ロイアルブルー」とタグに書かれたサファイアに出くわします(それでも2.6カラットのロアイルブルー石が1000万円以上で売られていますが・・)、ですからこのロイアルブルーやピジョンブラッドなどの評価は、あまり過信すべきではないといえるでしょう、その点で前回ご紹介したコインのグレーディングと似ています。

これに対して日本の鑑定会社は、このような主観的な評価は一般的にいたしません、鑑定というのはあくまで客観的な事実(例えばサイズ、熱処理の有無、産地などの特性、内包物の有無)などを行うもので、石の美しさなど主観的な評価を行うべきものではないという考えがあるからです。

長期の投資というものは一時の流行で行うべきものではありません、商業主義の鑑定会社によるピジョンブラッドやロイアルブルーということばに惑わされず、昔から根強い人気がある濃い血の色のような赤、深い海の青・・・現地で昔から珍重されてきたこのような石をお選びになるべきではないでしょうか。

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